納棺師はきつい?現実の過酷さと30代未経験から狙える将来性

この記事でわかること

  • 納棺師の仕事がきついと言われる4つの理由
  • 納棺師のやりがいとは?
  • 納棺師に向いている人の特徴
目次

納棺師の仕事がきついと言われる4つの理由

納棺師の仕事は、映画で描かれる「美しい送り出し」のイメージとは大きく異なります。

遺体の状態、感染症リスク、時間のプレッシャー、遺族の感情への対応——この4つの負荷が重なり合うのが、現場の現実です。

転職を検討しているなら、まずこの現実を正確に知っておくことが大切です。

遺体は事故死・腐敗など状態が悪い可能性があるため

納棺師が担当するのは、穏やかに亡くなった高齢者だけではありません。

交通事故や転落による損傷の激しい遺体、誰にも発見されないまま時間が経過した孤独死による腐敗遺体、自殺による変形など、目を背けたくなる状態の遺体と向き合う場面が必ずあります。

くわえて、死後に体が固まる「死後硬直」が進んだ遺体は関節が動かせない状態になるため、衣服の着せ替えや姿勢の調整に大きな筋力が必要です。

腰痛を職業病として抱える納棺師が多いのは、こうした肉体的な負荷の積み重ねが原因です。

死臭・血液・体液による感染症リスクがあるため

腐敗が進んだ遺体からは「死臭」と呼ばれる強烈な臭いが発生します。

これはタンパク質が細菌に分解されるときに生じる揮発性の化学物質が混ざり合ったもので、市販の消臭剤では対処できません。

臭いだけでなく、血液や体液を通じてB型・C型肝炎やHIVに感染するリスク、空気や飛沫を通じて結核や新型コロナウイルスに感染するリスクも伴います。

現場では使い捨てのニトリル製手袋やマスク、ゴーグルといった感染防止用の保護具を毎回着用して対応しますが、こうした緊張感の中で日々作業を続けること自体が、精神的な消耗につながるという声も聞かれます。

1〜2時間以内に完了しなければいけないプレッシャーがあるため

納棺式は、遺族が見守る中で行われる儀式です。

故人の体を清める湯灌から、死化粧、着せ替え、納棺の儀式の進行まで、すべての工程を通常1〜2時間以内に終わらせなければなりません。

しかも、これは「やり直しのきかない、故人にとって最後の一度きりの儀式」です。

遺体の状態がどれほど難しくても、遺族の前でミスは許されません。

経験を重ねるほど技術は上がりますが、毎回このプレッシャーを背負いながら作業をこなすことが、長期的な心身の消耗につながるケースがあります。

遺族の感情を受け止め続ける精神的消耗があるため

納棺師は、遺族にとって人生でもっとも悲しい瞬間に立ち会う仕事です。

泣き崩れる家族、怒りをあらわにする遺族、言葉を失った子ども——そうした感情が渦巻く空間でも、納棺師は落ち着いた態度と丁寧な所作を崩せません。

特に棺の蓋を閉める瞬間は、遺族と故人を永遠に引き離す行為であり、その場を仕切る重さは相当なものです。

感情移入しすぎれば作業に支障が出て、逆に冷たすぎると遺族の信頼を失います。

このバランスを毎回保ち続けることが、長く働くうえでもっとも難しい課題のひとつだと、現職者たちは口をそろえます。

納棺師のやりがいとは?

きつさが多い仕事である一方、納棺師には他の職業では得られないやりがいがあります。

遺族からの感謝の言葉、AIに奪われない技術、将来にわたる安定した需要、そしてキャリアアップの道——現場の声をもとに整理します。

遺族から感謝される体験

納棺師がつらい現場を続けられる最大の理由は、遺族から直接もらえる言葉の重みにあります。

「あなたに頼んでよかった」「まるで生き返ったようだ」——絶望の表情が安らぎへと変わる瞬間を目の前で見届けられる職業は、そう多くはありません。

毎日異なる人生の最期に立ち会うことで、自分自身の生き方や家族との時間を見つめ直すきっかけにもなると、現職者の多くが口にします。

金銭には換算できない、この仕事ならではの充実感です。

機械に代替できない技

遺体の状態に合わせた細やかな処置や、深い悲しみの中にいる遺族に寄り添いながら儀式を進める力は、AIやロボットには再現できません。

遺族それぞれの宗教観や地域の慣習、その場の空気を読んで対応を変える柔軟さはマニュアル化できないからです。

「どこへ行っても必要とされる技術」を手にできることは、将来への安心感につながります。

デジタル化が加速する社会においても、この仕事が機械に置き換えられる心配はないという点は、長く働き続けたい人にとって大きな強みです。

今後も安定した需要

日本は急速な高齢化が進んでおり、年間の死亡者数は2040年頃まで増え続けることが見込まれています。

葬儀の小規模化や低価格化が業界全体で進んでいる一方で、故人を丁寧に整えて送り出す納棺師の役割そのものがなくなることはありません。

「転職しても仕事が続くか不安」という声は転職検討者に多いですが、市場全体が拡大している納棺師は、その点では比較的安心できる職種のひとつといえます。

上位資格へのキャリアアップ

経験を積んだ先には、エンバーミングという高度な技術を習得するという道があります。

エンバーミングとは遺体の腐敗を防ぎ、損傷部位を修復する専門処置のことで、1件あたりの単価は15万円から25万円とされています。

この技術を身につけることで、収入を大きく引き上げることが可能です。

大手葬儀社では現場スタッフから管理職へのキャリアパスも用意されており、未経験からのスタートであっても、技術と経験を重ねるほど選択肢が広がっていく職業です。

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納棺師に向いている人の特徴

「自分に務まるだろうか」という不安は、納棺師への転職を検討している多くの人が感じることです。

向いている人には共通した特徴があります。

自分の性格や経歴と照らし合わせながら読んでみてください。

気持ちを冷静に切り替えられる人

納棺師に向いているのは、感情を完全に持たない人ではなく、感情を持ちながらも仕事中は切り替えられる人です。

遺族の悲しみに寄り添いながら、作業中は集中力を保ち、帰宅後には気持ちを整えられる——そのオン・オフができることが、長く続けるための鍵になります。

感情を引きずりやすい人や気持ちの波が激しい人は、現場での積み重なる消耗が大きくなりがちです。

凄惨な場面でも落ち着いて行動できる人は、この仕事と長く向き合えます。

遺族の想いを汲む力がある人

納棺式は、同じ内容が二度とない一度きりの儀式です。

遺族の宗教観、地域の風習、家族それぞれの事情によって、求められる対応はまったく変わります。

マニュアル通りに動くだけでは対応しきれない場面が必ず訪れるため、その場の空気を読みながら臨機応変に動けるコミュニケーション力が不可欠です。

他人のために尽くすことに喜びを感じられる人、相手の立場に立った丁寧な対話を自然にできる人は、遺族からの信頼を得やすく、現場での評価も高くなる傾向があります。

看護・介護・美容の経験がある人

看護師や介護士の経験は、遺体の扱い方や体液への対処、悲嘆の中にいる遺族との関わり方に直結します。

接客業の経験がある人も、気持ちが不安定な遺族への丁寧な対応という面で即戦力になりやすいといえます。

死化粧や着せ替えといった繊細な手先の作業については、メイクや裁縫の経験が習得スピードに差をもたらします。

異業種からのスタートであっても、こうした経験が一つでもあれば、十分に活躍できる土台になります。

納棺師の年収や待遇

「特殊な仕事だから給料が高いはず」というイメージを持つ人は多いですが、実態はやや異なります。

就職先の形態によって収入に大きな差があるため、どこで働くかが重要な判断ポイントになります。

平均年収は300〜400万円台

厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によれば、納棺師を含む職種区分の平均年収は約382万円で、月収は約26万円から28万円とされています。

日本の全産業平均と比べるとやや低めの水準です。

未経験で入社した場合、月給は19万円から21万円程度からのスタートになるケースが多く、最初の数年は仕事の過酷さと収入のバランスに葛藤を感じるという声も少なくありません。

葬儀社所属と納棺専門業者では給与体系や業務範囲が異なる

就職先の形態によって、年収には大きな開きがあります。

大手の上場葬儀社は年収が高い一方で、納棺以外に葬儀の設営や運営、営業など幅広い業務を担う必要があります。

納棺・湯灌に特化した専門会社は技術を深めやすい環境がある一方、年収は低めに留まりやすい傾向があります。

就職先の形態 年収の目安 特徴
上場・大手葬儀社 500万〜600万円 管理職になれば1,000万円超も可能。業務範囲が広い
中堅・地場葬儀社 400万〜500万円 地域密着型。独自の風習への理解が必要
納棺専門会社 300万〜400万円 技術特化。件数に応じた歩合制を導入している場合もある
未経験・入社直後 200万〜300万円 見習い期間。月給15万円〜21万円程度からスタート

夜間対応やノルマの有無を確認する

葬儀は時間を選ばず発生するため、夜間や早朝の呼び出しが日常的な職場もあります。

葬儀業界全体で価格競争が進んでいる背景から、件数をこなすことへのプレッシャーが強い環境も存在します。

転職先を選ぶ際は、夜間対応の頻度や件数に応じた歩合制の有無、実際の残業実態を事前に確認することが大切です。

給与の数字だけでなく、働き方の全体像を把握したうえで判断することが、入社後のミスマッチを防ぐことにつながります。

未経験・30代から納棺師になるために知っておきたいポイント

「年齢的にもう遅いのでは」と感じている方も、納棺師への転職は30代から十分に可能です。

資格の壁や学歴のハードルは低く、未経験から入れるルートが整っています。

就職に必須の国が認定する技能審査制度は存在しない

納棺師になるために、法律で定められた国が認定する技能審査制度は存在しません。

医師免許や看護師免許のように「持っていなければ働けない」という資格がないため、未経験でも求人に応募できます。

民間の教育機関であるおくりびとアカデミーが発行する修了証などは存在しますが、入社前に必須というわけではなく、就職後に会社の支援を受けながら取得するケースも多くあります。

多くの企業が35歳から40歳を採用の目安としており、意欲と適性があれば年齢だけで門を閉ざされることは少ないのが実態です。

未経験可求人はOJT体制や資格取得支援の有無で見極める

求人票に「未経験可」と書かれていても、入社後の教育環境には企業によって大きな差があります。

OJTとは職場で実際の業務を通じて技術を学ぶ育成方式のことで、先輩社員が同行してくれる期間がどれくらいあるかが、成長速度を左右します。

未経験からでも半年から1年程度で独り立ちできるルートが確立されている会社かどうかを、事前にしっかり確認することが、後悔のない転職につながります。

湯灌師から始めて納棺・エンバーミングへ段階的に専門性を高める

入社直後は、故人の体をお湯で洗い清める湯灌の担当からスタートするケースが多く、経験を重ねながら死化粧や着せ替えを含む納棺式全体の進行へとステップアップするのが一般的な流れです。

さらに経験を積んだ先には、遺体の腐敗を防ぎ損傷部位を修復するエンバーミングという高度な専門技術の習得という選択肢が開けます。

この技術は1件あたりの単価が15万円から25万円とされており、習得することで年収を大きく引き上げることができます。

資格なし・未経験でも、段階を踏んで専門性を高めていける点がこの職業の強みです。

まとめ

実際の現場を深く知ると「納棺師はきつい」と感じる場面も多いですが、その過酷さを上回る唯一無二のやりがいがあるのも事実です。

遺体の状態や感染症リスク、死臭といった厳しい現実に直面しますが、遺族からの直接の感謝やAIに代替されない確かな技術は、将来の大きな安心感に繋がります。

未経験や30代からでも、充実したOJT体制がある会社を選べば、将来的にエンバーミングなどの高度な専門職へステップアップする道も開けます。

負の側面を正しく理解し、適性を見極めた上で一歩踏み出せば、あなたの手で故人の最期を美しく彩る、誇り高いキャリアを築けるはずです。

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